室内環境の快適性や省エネが求められる現代社会において、オフィスビルや商業施設・公共施設など大規模な建物で注目されている「セントラル空調方式」。
このセントラル空調方式を支えているのがVAVという装置です。しかし「VAVってそもそも何?」「どういう仕組み?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、VAVの正式名称や読み方、基本的な仕組み、CAVとの違い、さらにはメリットや導入場面まで、わかりやすく丁寧に解説します。
空調・設備初心者の方でも理解できる「VAV空調の基礎知識」をしっかりお伝えします。
VAVとは?基本の読み方・正式名称・略称

VAVについて解説する前に、その言葉の意味や正式名、読み方、略語までをしっかりと理解しましょう。
VAVの正式名称と略語
VAVの正式名称は「Variable Air Volume(バリアブル・エア・ボリューム)」です。
日本語では「可変風量方式」と訳され、主に大型施設やオフィスビルの空調方式として広く採用されています。「VAV」とは「Variable Air Volume」の頭文字を取った略称で、空調技術の分野では通称として定着しています。
VAVの読み方
「VAV」はアルファベット読みで「ブイ・エー・ブイ」と発音するのが一般的ですが、業界では「バブ」と呼ばれることもあります。
正式場面やメーカー資料などでは「ブイエーブイ」と読むことが多いですが、「バブ」と略しても通じるため、会話や現場でもよく使われる呼び名です。
VAVの仕組みと特徴

ここからはVAVが持つ独自の仕組みや特徴について、初心者にも分かりやすく解説します。
VAV(Variable Air Volume)とは
VAVとは、空調の供給する「風量」を室内の温度状況に応じて変動させる「可変風量方式」の空調システムで使用される装置です。
室内負荷(室温の上下や人の出入り、機器の稼働状況)に応じ、各部屋またはゾーンごとに適切な風量を自動制御し、快適な室温を維持しながら省エネルギー(省コスト)も実現できる技術として広く採用されています。
基本的な構造と作動原理
セントラル空調におけるVAV方式は主に、「VAVユニット(装置)」「ダクト」「送風機」「コントローラー」「センサー」で構成されます。
- VAVユニット:主要構成機器で、各部屋のダクトに組み込まれる。内部には風量調整用のダンパー・風速センサー・モーターが組み込まれ、必要に応じてダンパーの開度が調整される
- センサー:温度センサーやCO₂センサーが室内条件を常時監視
- コントローラー:センサー情報から推奨風量を計算し、VAVユニットを制御
- 送風機・ダクト:ビル内で空気を循環・搬送
仕組みの流れ例:
- 温度センサーが室内温度を検出し、コントローラーへ現在温度を伝える
- コントローラーは室内温度が設定より高くなれば、ダンパーへ「風量を増やす(開く)」指令
- ダンパーはコントローラーからの開度指令を受信し、適正開度まで開く
VAV空調方式は従来の「一律な空調供給」と異なり、室ごと・ゾーンごとに柔軟な温度管理が行えるという大きな特徴があります。また、必要最小限の風量で空調を行うため、省エネ・ランニングコスト削減に貢献しています。
CAVとの違いとは?
VAVの仕組みや特徴について理解したところで、VAVの比較対象とされている「CAV」についても特徴やVAVとの違いについておさえておきましょう。
CAVとは
「CAV」とは「Constant Air Volume」の略称であり、「定風量方式」のことを言います。
CAV方式は、送風機から一律で一定量の空気(風量)を常時供給するシステムで、VAVとは異なり風量自体は変化しません。
設定した温度に近づけるためには空調機本体が風の温度を変える必要があります。
小規模施設や一室全体を同環境に保ちたい場合に向いています。
VAV方式とCAV方式の違い
- 制御方法
CAV:風量は一定、温度調整は供給空気の温度で行う(空調機側で風の温度変更する)
VAV:供給空気温度は一定、必要な風量だけを変化させて室温を調整 - 快適性
VAVは室ごとに“微調整”できるため、各部屋やゾーンごとの人・機械による発熱量に応じて最適制御可能 - 省エネ性
VAVは室内の必要風量に合わせて空調機のファン回転数を下げるなど、未使用室や負荷変動の大きい空間でのエネルギー節約が可能
VAVが選ばれる理由―メリットや用途例

このセクションでは、なぜVAV空調が多くの現場で導入されているのか、その理由や用途を詳しく解説します。
メリット(利点)
- 省エネ・コスト削減
必要なエリア・時間帯だけ空調を稼働させることでエネルギー削減・光熱費削減につながります。 - 柔軟な個別制御
オフィス・店舗など省力化・効率化・快適性向上 - 環境負荷低減
CO₂排出量を抑え、SDGs的にも歓迎される
用途例
- オフィスビル(ゾーンごとの温度管理・経費抑制)
- ショッピングモール(テナント特性に応じた空調制御)
- ホテル、病院(様々な利用環境に柔軟に対応)
- 工場・倉庫(作業場所の熱負荷変動への対応)
- 大型施設、映画館や体育館など多用途空間
よくあるFAQ「VAV空調はどんな施設に向いてる?」
このセクションでは、VAV空調に関するよくある質問とその答えをまとめます。
Q:VAV空調はどんな施設に向いていますか?
A:オフィスビル、商業施設、ホテル、病院、大型工場、公共施設など、ゾーンごと・部屋ごとに負荷が大きく変化する、または同時利用がまばらな大規模建物に最適です。
また、CO₂濃度や室温に厳しい制御を求める精密工場、研究施設にも多く採用されています。
Q:住宅でもVAV方式は使えますか?
A:基本的には業務用・大型施設向けです。住宅用はコストや規模の観点からCAV方式や個別エアコンが主流です。
まとめ
セントラル空調におけるVAV制御は、室内環境の快適さと省エネルギーを両立できる現代施設の空調制御方式として、オフィスや商業施設を中心に幅広く活用されています。
「Variable Air Volume」=可変風量方式という特徴で、ゾーンごとの精密な温度管理・経費削減・環境負荷低減を実現できるのが最大の魅力です。
今後もIoTやAI技術との連携で、より高効率でスマートな空調システムへの進化が期待されています。