「トランジスタとは何か?」――この疑問は、電子回路や半導体について学び始めた多くの初心者が最初につまずくポイントです。
トランジスタはパソコンやスマートフォンはもちろん、身近な家電や自動車にも登場する、現代社会に欠かせない電子部品のひとつです。
この記事では、トランジスタの基本的な仕組みや役割、構造について図解を交えながら、やさしく・わかりやすく解説します。
トランジスタとは?初心者にも簡単にわかる仕組みと基本役割【図解】

まず最初に結論を――
トランジスタとは、「微弱な電気信号で大きな電流を制御できる、電子回路の超重要部品」です。
パソコンやスマートフォン、家電製品から車まで、ありとあらゆる電子機器の中で働いています。
トランジスタが無かったら、現代社会の便利な生活も成り立ちません。
まずはトランジスタの仕組みについて解説していきます。
トランジスタの仕組み
トランジスタは、抵抗・コンデンサ・ダイオードと並ぶ電子回路の4大基本部品のひとつです。
トランジスタは「半導体材料(主にシリコン)」でできていることから半導体部品と呼ばれることもあります。
半導体とは「金属のように電気が流れる」=導体、「まったく流れない」=絶縁体、その中間の性質を持っています。
この性質を活用することで「少しの電気で大きな電流をON/OFF」したり、「電気を増幅」することができます。
――それが電子部品におけるトランジスタの役割になります。
トランジスタの基礎構造【イラスト付き】
ここからはもう少しトランジスタの仕組みについて踏み込んでいきましょう。
トランジスタは「N型・P型」の半導体を組み合わせた、指先ほどの小さな部品になります。
N型半導体とP型半導体(参考)
N型半導体(Negative type semiconductor):負電荷の自由電子によって電気伝導が起こる半導体。
P型半導体(Positive type semiconductor):自由電子が存在しない半導体。
このN型半導体とP型半導体を組み合わせることでトランジスタになります。
NPN型(日本語で最もよく使われるタイプ)

- 半導体のN型―P型―N型の3層構造
- 端子名:エミッタ(E)、ベース(B)、コレクタ(C)
PNP型

- 構造が逆でP型―N型―P型
- 動作もNPNとほぼ同様だが、電流の向きが反対になる
トランジスタの役割と用途
トランジスタの基本的な仕組みについて理解したところで役割と用途について詳しくみていきましょう。
電子機器におけるトランジスタの役割主に以下の2つになります。
トランジスタの役割
- 電流増幅作用
- スイッチング作用
1. 電流増幅(アンプ)
「弱い電気信号を、強い信号に変える」役割。
例:マイクから拾った微小音声→スピーカーを鳴らせるレベルまで大きくする。
2. スイッチング
「入力信号が来ると、電流の通り道を開閉(ON/OFF)する」役割。
例:パソコンのCPUの論理回路や様々な機器の電源制御に使用する。
ダイオードとの違いとは
ここで補足ですが、よくトランジスタとダイオードが混同されることがあります。
それはダイオードも半導体部品(構造も似ています。)であり、スイッチング作用があるためです。
ですが、厳密にはトランジスタとダイオードはまったくの別物ですので、その点は頭の片隅に入れておきましょう。
部品 | 役割 |
---|---|
ダイオード | 一方向だけ電気を流す |
トランジスタ | 信号で電流の強さやスイッチを制御 |
ダイオードは「通す・通さない」だけ。トランジスタは「信号に合わせて“増幅”や“スイッチ”」など、より複雑な制御ができます。
詳しくは【ダイオードとは何か?初心者にもわかりやすく解説】もご覧ください。
身近な用途例・どんなモノに使われている?

トランジスタは以下のようのような電子機器に利用やれています。
主な使用例
- パソコン・スマホ・タブレット
→CPUやメモリ内部には数十億個!のトランジスタが詰まっている - テレビやオーディオ
→信号増幅やロジック回路のキー部品 - エアコン・冷蔵庫・電子レンジなどの家電
→モーター制御や各種安全回路で活躍 - 自動車
→エンジン・電装部品や安全制御まで、数万個単位で搭載
マメ知識:マイクロプロセッサへのつながり
「ICチップ」や「マイクロプロセッサ(CPU)」の中身は、微小なトランジスタが膨大な数並び、論理回路やスイッチを構成しています。
コンピュータの進化=トランジスタの微細化・高密度化・高速化の歴史そのものです。
よくある質問Q&A
Q: トランジスタと半導体は同じもの?
A: 「半導体」は“材料”や“広い分野”全体の名前で、
トランジスタは“半導体材料で作られた部品(素子)の一つ”です。
Q: どのくらい小さいの?
A: 一般的なディスクリート部品は数ミリ角ですが、ICチップの中では10nm(ナノメートル)、つまり髪の毛の数万分の1サイズで作られています!
Q: どうやって見分けるの?
A: 外観数パターン(黒い豆=樹脂封止型や、ガラス管/金属缶型など)+型番(2SC〇〇など)で判別します。
まとめ
ここまでトランジスタの基本的な仕組みや役割について解説してきました。
トランジスタについてまとめると
- トランジスタは「微小な信号で大電流を制御」できる電子回路の基本部品
- 電流増幅・スイッチの二大役割があり、現代すべての電子機器に不可欠
- NPN/PNP構造や、一見難しそうな素子も、流れや用途をイメージで掴めば理解しやすい
- ダイオードとの違いもおさえておきましょう
電子工作や技術学習・資格取得の第一歩として、ぜひ「トランジスタ」の世界に挑戦してみてください!