空調業界でよく耳にする専門用語として「過熱度」があります。
過熱度は空調機や冷凍機が正常に機能しているか判断する上で使用される指標で冷凍空調技術においては重要な要素です。
そのため過熱度を正しく理解することは特に冷凍機や空調関連の仕事をする人にとってはとても重要な上に業務でも役に立ちます。
この記事では主に空調機における過熱度の基本から計算方法まで、なるべく分かりやすく解説していきます。
過熱度とは?基礎から計算方法まで詳しく解説!

過熱度と冷凍サイクルについて
過熱度について理解していくためには、まず冷凍サイクルについて知っておかなければなりません。
まずは簡単に冷凍サイクルについて説明していきます。
通常の空調機では、圧縮機→凝縮器→膨張弁→蒸発器のような流れで冷媒(フロンガスなど)が循環し、冷房や暖房を行います。
ここでは冷房時を例に説明しますが、圧縮機→凝縮器→膨張弁→蒸発器の順に循環する中で冷媒は高温高圧ガス→高温高圧液→低温低圧液→低温低圧ガスのように状態変化します。

その中で蒸発器にて低温低圧液→低温低圧ガスなる時に様々な要因でガス化した冷媒が過剰に吸熱してしまうことがあります。
このことを過剰に吸熱する度合いを「過熱度」と言います。
つまり過熱度とは冷凍機や空調機内部の冷媒(フロンガス)が液体から蒸発しきった後にさらに加えられた熱量を示す指標ということになります。

これは低圧側蒸発器(熱交換器)の冷媒温度が、冷媒の飽和温度と比べてどれだけ高いかを示しているとも言えます。
次に過熱度の計算方法について解説します。
過熱度の計算方法(求め方)
ここでは過熱度の一般的な計算方法について解説していきます。
過熱度は蒸気温度から冷媒液が完全にガス化(気体)する飽和温度を引くと求まります。
計算式は次の通りです。
[ {過熱度} = {蒸気温度} – {飽和温度} ]また、空調機のメーカーなどによっては圧縮器吸入管温度から蒸気温度を引いて求める場合もあります。
[ {過熱度} = {圧縮機吸入管温度} – {蒸気温度} ]過熱度の計算例
例えば、熱交換器出口の冷媒温度が15℃で、飽和温度が10℃の場合の過熱度を例に計算してみましょう
加熱度:[ 15℃ {蒸気温度}- 10℃ = 5℃ {飽和温度} ]
過熱度の重要性と圧縮機への影響

過熱度はできるだけ維持すべきあるいは調整すべき範囲があります。
メーカーや製品によって異なりますが、過熱度の正常値は5℃から15℃とする場合が多いです。
これは過熱度が低すぎても高すぎても冷凍サイクルに悪影響を及ぼすためです。
冷媒は空気を冷やしたり、温めたりするだけでなく冷媒系統内を循環し圧縮機を冷やすことで圧縮機の発熱を抑制する役割も担っています。
例えば過熱度が高すぎると圧縮機が発熱し、最悪の場合故障してしまう恐れがあります。
このように機器の故障や冷凍機や空調機の能力を発揮するためにも過熱度の適正化は非常に重要なのです。
まとめ
今回は冷凍空調における過熱度について解説しました。
過熱度という指標は冷凍機や空調機を正常に運用する上で重要であることを理解できたのではないでしょうか。
また、過熱度から冷凍空調機器の故障診断をすることも可能なのでエンジニアの方にも役立つ指標です。
ぜひ過熱度を活用して冷凍空調の運用にお役立てください。