エアコンや冷凍機といった空調機器の仕組みを理解するうえで、必ず登場するのが「過冷却度(Subcool)」という冷媒用語です。「なんとなく聞いたことはあるけれど、イメージがわかない…」「過熱度とどう違うの?」と感じている方も多いでしょう。
この記事では、過冷却度の基本的な意味と原理、冷凍サイクル・エアコンのどの部分で登場するのか、その役割や実務例、英語表記や単位、関連専門語、図解なども交えつつていねいに解説します。初学者の方でもスムーズに理解できる構成になっていますので、ぜひ参考にしてください。
過冷却度の定義・英語表記(Subcool)・単位
まずは「過冷却度」が何を示す言葉なのか、その定義と英語・単位を簡潔に整理します。専門用語の解釈や冷媒計算の初歩としても大切なポイントです。
過冷却度の定義
過冷却度とは、液体となった冷媒が“飽和温度(本来その圧力で気体と液体が共存できる温度)”よりも、どれだけ低い温度まで冷やされたかを示す温度差のことです。
冷凍サイクルやエアコンの「凝縮器(コンデンサ)」出口で測定されるのが一般的です。
英語表記・単位
- 英語:Subcool(サブクール)
- 単位:℃(度C)またはK(ケルビン)
- 略記:SC、またはSubC
計算式
過冷却度を算出する方法として一般的な計算式は以下の通りです。
過冷却度(Subcool)=液体冷媒の実測温度(凝縮器出口温度) - 同じ圧力での飽和温度
たとえば、凝縮器(コンデンサ)出口の液冷媒温度が35℃、その地点の冷媒の飽和温度が40℃なら
過冷却度 = 35℃ − 40℃ = −5℃(絶対値で5℃)
となります。
ポイント!
過冷却度は“どれだけ液体冷媒が「冷やされすぎている」状態か”を表す概念です。
計算と実務例
- 例1)冷媒の状態確認
コンデンサ出口の圧力:1.5MPa → 飽和温度=45℃
実際の液冷媒温度=38℃
過冷却度=45℃−38℃=7℃ - 例2)点検での使われ方
点検時に過冷却度が基準より低い→冷媒不足や空気混入、凝縮器の熱交換不良などのサイン
逆に高すぎる場合→冷媒充填過多や配管の熱伝導異常、システム設計ミスの可能性も - 現場アドバイス:数値だけでなく、「冷媒の種類」「機種」「外気条件」なども総合して判断することが重要です。
【図解で解説】冷凍サイクル上での計測点
先ほど過冷却度は凝縮器(コンデンサ)出口と飽和温度にて算出することを説明しましたが、ここではよりイメージしやすいように冷凍サイクルを確認しながら、過冷却度の計測点を見ていきましょう。
下記が標準的な冷凍サイクルになります。(図解例/家庭用エアコンに多いR32やR410A冷媒の場合)

圧縮機
↓
凝縮器(コンデンサ)←------★ここが過冷却度測定点
↓
膨張弁
↓
蒸発器(エバポレーター)
↓
圧縮機に戻る
- 過冷却度はコンデンサ出口の液冷媒がどれくらい「飽和温度以下」に冷やされているかで計測されます。
冷凍サイクル・エアコンでの役割
過冷却度は、冷凍サイクルやエアコンでどんな働きをしており、なぜ重要なのでしょうか?このセクションではその仕組みや役割を解説します。
なぜ過冷却度が必要?
- 圧縮機によって高温・高圧となった冷媒ガスは、凝縮器(コンデンサ)で冷やされて液体になります。この液体は膨張弁へ送られますが、もし液体内にまだガス(気体)が残っていると冷却効率が下がる上、膨張弁の制御や冷却器の動作に悪影響が出ます。
- 過冷却度を持たせる(しっかり液体を冷やす)ことで、「完全な液体状態」の冷媒だけが膨張弁に送られ、安定した冷却や省エネがかなうのです。
現場での指標
- 一般的な家庭用機器では過冷却度が2〜8℃程度になるよう設計・調整されているのが標準です。
- 値が低すぎる場合…泡混入で冷凍効率ダウン・異常運転やトラブルのサイン
- 値が高すぎる場合…逆に省エネ効率ダウンや液戻りのリスク
関連用語(過熱度・冷媒)もあわせて理解
冷媒サイクルの理解には、「過冷却度」とよく比較される「過熱度」や「冷媒(refrigerant)」の基礎も必須です。混同しやすい専門語をわかりやすく整理します。
用語一覧と簡単な説明
用語名 | 意味・位置付け |
---|---|
過冷却度 | 液体冷媒が飽和温度より“下がっている”温度差(コンデンサ出口) |
過熱度 | 気体冷媒が飽和温度より“上がっている”温度差(エバポレーター出口) |
飽和温度 | その圧力下で液体・気体が共存する状態の温度 |
冷媒 | 熱を運ぶ役割の流体。多くはフロン系(R32, R410Aなど) |
蒸発器 | 冷媒が蒸発(気化)し熱を奪う熱交換器 |
凝縮器 | 冷媒が凝縮(液化)し熱を放出する熱交換器 |
過熱度(superheat)について詳しく知りたい方はこちら→【冷媒・空調用語】過熱度とは?意味・定義・エアコンとの関係をやさしく解説
まとめ
過冷却度は、エアコンや冷凍機の冷媒サイクルにとって「冷媒が完全な液体で膨張弁やエバポレーターに入るために必要不可欠な指標」です。基準値を意識することで、省エネ運転やトラブル予防も可能になります。
「過冷却度=液体冷媒が飽和温度よりどれだけ冷やされたか」を覚えておけば、冷凍サイクルの点検診断・専門家との会話に必ず役立つはずです。