冷凍サイクルはエアコンや冷蔵庫、冷凍機などの“熱を移動させる機械”の心臓部となるしくみです。
一言でまとめると、「ある場所から熱を取り去って、別の場所に捨てる」ための働きを担っています。
この冷凍サイクルを理解することは、建物設備の運用管理者や空調エンジニア、冷凍冷凍機械責任者などの資格学習者にとってはとても重要です。
この記事では冷凍サイクルの基礎と仕組み、冷凍サイクル評価に使用する線図を初心者にも図解でやさしく解説していきます。
【図解でわかる】冷凍サイクルを図でわかりやすく解説!原理・仕組みを初心者にも簡単に|PH・TS・PV線図も紹介

冷凍サイクルを理解するには大きく2つの要素を理解する必要があります。
冷凍サイクルを理解するための要素
- 冷凍サイクルに使用される主要部品や冷媒ガスについて知る。
- 冷凍サイクルにおける主要部品や冷媒ガスの役割について知る。
さらに冷凍サイクルをより早く理解するためには「なぜ配管に冷たい・熱い部分があるのか?」「どうして圧縮機が必要なのか?」といった疑問を持ちながら、解決していくのが近道です。
それではさっそく「冷凍サイクルに使用される主要部品や冷媒ガス」についてみていきましょう。
【図解】冷凍サイクルの流れと主要部品

ここでは最も基本的な「単一ステージ冷凍サイクル(単冷サイクル)」を例に、その流れと主要部品をやさしく解説します。
まずは冷凍サイクルにおける冷媒ガスの役割について解説します。
冷媒ガスの役割

冷凍サイクルには冷媒(れいばい)と呼ばれる特殊なガスが欠かせません。
あまり聞きなれないかも知れませんが実は私たちの身の回りでも身近に使われています。
例えばエアコンや冷蔵庫など「物を冷やしたり、暖めたり」する機械に搭載されています。
冷凍サイクルにおける冷媒ガスは熱を吸収、排出、運搬する役割を担います。
この冷媒ガスが冷凍サイクル内を循環することで、エアコンでは冷房や暖房が使用できたり、冷凍機では冷たい水を作り出すことができるのです。
冷媒(れいばい)と呼ばれる特殊なガスが、
1)冷たい部分で熱を“奪い”(気化)
2)圧縮されて高温・高圧になり
3)熱を“吐き出して”(凝縮)
4)再び冷たい部分に戻る
この1周=「冷凍サイクル」と呼びます。
次に冷凍サイクルにおける主要部品についてみていきましょう。
冷凍サイクルの主要部品
冷凍サイクルは主に「圧縮機」「凝縮器」「膨張弁」「蒸発器」という4つの主要部品で構成されています。
この4つの部品が冷媒ガスの状態を変化させ、熱の吸収、排出、運搬を可能にしています。
それでは各主要部品について詳しくみていきましょう。
圧縮機(コンプレッサー)

- 低圧力・低温の冷媒ガスを吸い込み、高圧・高温までギュッと圧縮
- 冷凍サイクルの“エンジン”役
凝縮器(コンデンサー)

- 圧縮機で高温になった冷媒が通る
- 外気や水によって熱を放出(凝縮)し、冷媒ガスが気体→液体になる
- 典型例:エアコン室外機の金属フィン
膨張弁(エキスパンションバルブ)

- 高圧側と低圧側の“減圧弁”のような役割
- 液体冷媒を急激に膨張・減圧し、低温・低圧にする
蒸発器(エバポレーター)

- 膨張弁を通過した低温・低圧の冷媒が熱を吸収して気化(蒸発)する場所
- 室内側の熱交換器や冷蔵庫のパイプ部分
冷媒ガスはこの4つの機器を順番にグルグル回りながら、「熱を移動」させます(だから“サイクル”)。
PH線図・TS線図・PV線図とは?違いと使い方を図で解説
冷凍サイクルの状態変化を、図(“線図”と呼ばれるグラフ)で理解することができれば、エンジニリングや資格試験対策にも大きく役立ちます。
ここでは冷凍サイクルに関連するPH線図・TS線図・PV線図について、簡単に触れておきたいと思います。
PH線図(エンタルピー-圧力線図:h–p線図)

PH線図は、縦軸に圧力(P)、横軸にエンタルピー(h)をとった線図です。冷媒の状態変化(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)をひと目で把握できます。
- 冷凍サイクルの各工程(圧縮、凝縮、膨張、蒸発)が直線や曲線としてはっきりと描けるため、工程ごとのエンタルピー変化が明確です。
- 冷媒の消費エネルギーや冷凍能力、圧縮機の仕事量を正確に求めるのに最適で、設計・シミュレーションの基本となります。
- 液体線・気体線・混合域(二相域)が区別でき、蒸発・凝縮に伴う冷媒の変化も直感的に把握できます。
TS線図(温度-エントロピー線図:T–s線図)

TS線図は、縦軸に温度(T)、横軸にエントロピー(S)をとった線図です。冷凍サイクルの熱効率を評価するのに役立ちます。
- 冷凍サイクルの理論的効率(例えばカルノーサイクル)比較や、各工程の可逆性・不可逆性の確認に利用されます。
- 圧縮や膨張にともなうエントロピー増減が示され、断熱過程は縦線、等温過程は横線として表現されるため、熱力学的プロセスの分かりやすい可視化が可能です。
- 発生する熱や失われるエネルギー(不可逆損失)を評価しやすいという特徴があります。
PV線図(圧力-体積線図:p–v線図)

PV線図は、縦軸に圧力(P)、横軸に体積(V)をとった線図です。冷媒ガスの状態変化に連動する体積変化を分析します。このことで圧縮機内部の状態をリアルタイムで把握することができます。
- 冷凍サイクル内での膨張・圧縮時の仕事量(例えば曲線下の面積)を視覚的に捉えることができます。
- 各工程ごとの体積変化や圧力変動、液相・気相の境界などを把握しやすいのが特徴です。
- 仕事量や圧縮比、ポンプや圧縮機の設計・選定時の参考資料として有用です。
各線図のまとめ
- PH線図:冷凍サイクルのエネルギー解析や仕事量・冷凍能力の計算に適している。
- TS線図:冷凍サイクルの熱効率や可逆性、エネルギー損失の評価に使う。
- PV線図:体積変化や圧縮・膨張による仕事量の把握、圧縮装置の基本情報となる。
Q&A:冷凍サイクル図解・線図によくある質問
Q1:PH線図とTS線図は何がどう違う?
A:
- PH線図→「エネルギー収支」の計算や冷媒ガスの圧力管理に使用する。
- TS線図→「熱効率や熱損失」の分析・理想冷凍サイクルの比較に使用する。
Q2:線図の見方がどうしても覚えられません。コツは?
A:
- まずは冷媒ガスの“状態点(高温高圧ガス、高温高圧液、低温低圧液、低温低圧ガス)”を4つだけ覚え、線を繋ぎながら流れをイメージしましょう。
- 図中に「圧縮→凝縮→膨張→蒸発」と順番を書き込み、毎回指でなぞるクセをつけると定着が早いです。
まとめ|まず覚えたいポイント&次の一歩
ここまで冷凍サイクルの基礎と仕組みや冷凍サイクルを評価するためのPH線図・TS線図・PV線図について解説していきました。
冷凍サイクルを理解することは短時間では難しいと思います。
冷凍サイクルや線図の見方を理解するには根気強く反復練習することが一番です。
冷凍サイクルや線図の見方をより早く理解したい方は以下の点を意識して取り組みましょう!
- 冷凍サイクルは「熱を移動させる」装置の基本原理で、4つの機器がバトンリレーをするイメージ
- PH線図、TS線図、PV線図は、それぞれ違う“物理量の視点”でサイクルを理解できる
- 線図ごとに何を見るべきか(エネルギー?効率?体積?)を整理すると、記憶に残りやすい
まずは図を見て“流れをなぞる習慣”から始めることで、冷凍サイクルにグンと強くなれるでしょう。