空調機で使用される冷媒ガスは技術の進歩に沿って変化してきました。
現在では地球温暖化の抑制を目指す動きが世界中で加速する中で、主流となっている冷媒R32は大きく注目されています。
オゾン層を破壊しない特性と、地球温暖化係数(GWP)が低いという利点から、従来の冷媒に代わって急速に採用され始めています。
特に空調業界最大手のダイキンが先駆けて導入したことで、その優れた性能が評価され、業界にインパクトを与えています。
この記事では冷媒R32について特徴や安全性についてわかりやすく解説していきます。
冷媒R32とは?その特徴と安全性を徹底解説

冷媒R32の歴史的背景とモントリオール議定書による規制
空調機に使用される冷媒は技術的進歩を経て様々な進化を遂げてきました。
その背景には地球温暖化を抑制する世界的な目的と深く関係しています。
昔は空調機にCFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)という冷媒が使用されていましたがこれらは大気に放出されると太陽からの紫外線によって分解されオゾンを破壊する塩素分子を放出することが1970年代から指摘されるようになりました。
そこで1987年にモントリオール議定書というオゾン層を破壊する成分を含む冷媒の使用を規制するための国際条約が合意されたのです。
この議定書に基づき、2000年前後からオゾン層破壊係数がゼロのHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒への転換が進められてきました。
そして冷媒R410Aというオゾン層を破壊しない冷媒が2000年以降に広く普及しました。
HFC冷媒の進化とR32の台頭
HFC冷媒の進化は、環境への影響を最小限に抑えるために現在も進められています。
従来のR410Aはオゾン層破壊係数はゼロですが、GWP(地球温暖化係数)という温室効果ガスを排出する係数高かったのです。
そこで開発されたのが新冷媒R32です。
HFC32とHFC410Aの比較

ここでは具体的に冷媒R32がどのようにR410Aよりも優れているか比較してみましょう。
冷媒の環境負荷を比較する指標としてオゾン層破壊係数や地球温暖化係数があります。
新冷媒のR32はGWP(地球温暖化係数)がR410Aの2090の1/3である675と低く、環境への負担がかなり軽減されています。
項目 | R410A | R32 |
---|---|---|
オゾン層破壊係数 (ODP:Ozone Depletion Potential) | 0 | 0 |
地球温暖化係数 (GWP:Global Warming Potential) | 2090 | 675 |
このようにR32はR410Aよりも環境負荷が少なく、より地球温暖化に影響の少ない冷媒として現在では幅広く普及しています。
余談ですがこの冷媒HFC32(R32)は日本企業の空調最大手ダイキン工業が開発した冷媒になります。
現在では世界中で使用される標準冷媒となりつつあり、大変誇らしいですね。
ダイキン工業:新冷媒 R32 世界で初めてHFC冷媒R32を採用
冷媒R32の市場動向と規制
地球温暖化対策に向けた冷媒規制の動き
今後、世界ではHFC系冷媒のさらに厳しい規制が予定されています。
欧州ではすでに具体的な規制が施行されている一方で、新興国でも規制とともにR32への転換が進むと予想されます。
欧州では、段階的な規制によって環境負荷の低い冷媒の使用を推進するフロン排出抑制法が施行されています。
これにより、R32のような低GWP冷媒への転換が促進されています。
まとめと今後の展望
ここまで空調冷媒の歴史と新冷媒R32について解説してきました。
今後の展望として新冷媒R32は、環境負荷を抑える冷媒として次世代のスタンダードになる可能性があります。
冷媒技術は空調だけでなく、冷蔵技術などとも密接に関わる技術です。
ダイキンの取り組みにより、環境負荷の低減と省エネ性能の向上が実現していけば環境負荷ゼロの空調も夢ではないかもしれません。