工場やビル設備の点検や電気工事の現場では、「動力盤」「電灯盤」「制御盤」といったパネル(=“盤”)を正しく理解し用途を理解していることが重要です。
この記事では、それぞれの盤の定義や特徴、違いを現場経験者の視点から徹底解説します。目的・構造を分かりやすいく比較表などを用いて解説していきます。しっかり基礎を押さえることで、現場作業をスムーズにおこなうことが可能です。
動力盤・電灯盤・制御盤の定義と違い
まずは3つの盤の違い・共通点、その“役割の基本”をまとめて理解しましょう。業者・現場の専門用語とも照らして整理します。
| 盤の名称 | 主な用途 | 供給する電気 | 代表設置場所 |
|---|---|---|---|
| 動力盤 | モーター・機械駆動用 | 主に三相200V・高出力 | 工場、ビルの機械室 |
| 電灯盤(L盤) | 照明・コンセント・小型負荷用 | 主に単相100V/200V | オフィス、住宅、商業施設 |
| 制御盤 | 機械制御・制御回路・自動運転 | 低電圧制御信号+動力回路 | 機械横 |
結論:違いのポイント
- 動力盤…「動力(=機械や大型設備の駆動)」に電力を供給する盤。モーターなど高容量用途向け
- 電灯盤…「電灯(=照明・コンセント)」向け。分電機能が中心で小規模負荷に特化
- 制御盤…「制御(=機械や装置のON/OFFや自動化)」を受け持つ。リレーやPLCが内蔵されているのが特徴
この3盤は「どこに」「何のために」電気を供給・制御するかで目的が分かれて設計されています。
動力盤(P盤)の役割と特徴

この章では「動力盤」に特有の構造・役割にフォーカスし、図や例を交えて分かりやすく説明します。
動力盤とは?
工場や大型施設のポンプ、送風機、コンベア、エアコン、溶接機など、“電動機(モーター)や大容量機器”を動かす三相200Vや400V電源をまとめて分岐・配線する盤です。
- 電力のON・OFF、過負荷・短絡時の保護(大型ブレーカー搭載)
- 動力回路の分岐・切替制御、状態表示機能つきも多い
- 盤前面には「P-1」「P-2」などPower略号がよく付記される(P盤)
構成例
- 幹線(主電源)用大型配線・主幹ブレーカー
- 各モーター等への分岐回路(配線用遮断器・マグネットスイッチ)
- 異常時停止・警報表示(ランプやアラーム)
使用現場・注意点
- 工場・商業ビル・マンションの共用設備など動力負荷機器のある場所
- 電灯盤と分離設計することでトラブル時の復旧・運用が容易
電灯盤(L盤)の役割と特徴

「電灯盤(L盤)」は主に家庭やビル・オフィスの照明、コンセント回路、小型負荷の供給を担う盤です。ユーザー向け分電盤(家庭用ブレーカーBOX)もこのカテゴリに含まれます。
電灯盤のポイント
- 主に単相100V/200Vの分岐配線と保護を担当
- ブレーカー種別や幹線が異なり、動力盤よりも小型(分岐数は多め)
- 前面表示例:L-1(Light)などと番号が付与されることが多い
- コンセントブレーカー、照明用ブレーカーを分かりやすくゾーン管理できる
構成・他盤との違い
- 幹線から配線用遮断器(ブレーカー)へ。各照明・コンセントなどへ分岐
- 電灯・動力が一体設計の複合盤もあるが、管理性重視で「分離設計」が基本
現場で役立つメリット
- ブレーカー探し(メンテ・修理時)が効率化
- ひと目でどの回路がどこに対応しているかわかる表記推奨
制御盤の役割と特徴

制御盤は「機械・自動ライン・設備の動作指令や自動運転」を担う、まさに制御システムの中枢です。電気設計やIoT化時代には最重要の盤種となっています。
制御盤とは
- 制御部品(リレー、PLC、タイマー、端子台、インバータ等)・信号用電源が主役
- 機械一体用やライン集中制御用など多様
- 操作スイッチ、表示灯、計測器が全面に並ぶことも多い
用途・設計のポイント
- モーター・アクチュエータ・センサーなどのON/OFF・順序制御に使用
- 各種安全回路(非常停止・インターロック)や異常時のお知らせ出力も
- 小型から大型まで設置形状・部品点数とも多種多様
動力盤・電灯盤との違い
- 信号系の制御・論理回路部分を担い、動力供給(パワーライン)は動力盤や電灯盤に分担される
- 「動力制御盤」など合体した複合盤も存在
盤ごとの比較表・用途・現場での使い分け
ここでは用途比較とともに「どんな現場でどの盤をどう組み合わせて使うのか」実際の使い分けを表で整理します。
主要3盤の比較表
| 比較項目 | 動力盤 | 電灯盤(L盤) | 制御盤 |
|---|---|---|---|
| 供給する電気 | 三相交流(200Vなど) | 単相交流100V/200V | 主に制御信号(24Vなど) |
| 主な役割 | モーター・動力設備用 | 照明・小型負荷・コンセント | 機械動作や自動制御 |
| 主な場所 | 工場、ビル、現場全般 | 住宅、ビル、一般施設 | 製造現場、装置直近 |
| 表記例 | P-1, P-2… | L-1, L-2… | CP-1,CP-2… |
| 主な構成機器 | MCCB、MS、各種接触器 | MCCB、配線用遮断器 | PLC、リレー、端子台 |
| 設計ミス例 | 容量不足、誤配線 | 回路混在、表記不足 | ノイズ混入、誤動作 |
使い分け例
- 工場現場:「動力盤+制御盤(ライン操作)」「電灯盤(作業灯・コンセント)」でゾーニング
- 大型ビル:「電灯盤(事務所各階)」+「動力盤(ポンプ/空調)」+「制御盤(換気設備/センサ管理)」で分離管理
- 住宅規模:一体型分電盤(小型電灯盤)でシンプルに対応
図記号・設計時の注意点
この章では盤や配線図面で必須の“図記号”、設計・運用時の注意点も押さえておきましょう。
主な図記号の例
- 動力盤 ⇒ P…、電灯盤 ⇒ L…、制御盤 ⇒ C…またはMCC(Motor Control Center)
- 各ブレーカー(□)、リレー(○)、サージ(Z)、アース(⊥)など
- JIS規格にもとづく共通記号一覧は盤記号解説記事で詳しく
設計時の注意点
- 「動力・電灯・制御」回路は原則“物理的分離”が基本
- 表記ラベル/図記号を戸惑わない明快なレイアウトで記載
- 意図や負荷容量に合うブレーカー・電線径の選定
- 複合盤設計もOKだが、保全性や運用性に配慮
- 増設や将来的なIoT連携余地を考慮するとベター
まとめ
「動力盤・電灯盤・制御盤」は役割・用途・設置場所が明確に区別されています。現場や設計では“どの盤が、どの負荷・設備を担うか”を正しく把握し、比較表・図記号を活用してミスやトラブルを回避しましょう。









