IoT(モノのインターネット)技術が社会のあらゆる分野で加速的に普及する中、「NB-IoT」という通信規格が注目を集めています。
しかし、「NB-IoTとはそもそも何なのか?」「他のLPWA規格や4G/5Gと何が違うの?」と疑問を持つ方も多いはずです。
この記事では、NB-IoTの仕組みや誕生の背景、主要メリット、他通信規格との違い、そしてスマートメーターやインフラ監視、農業などの代表的な用途例まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
NB-IoTとは?基礎からわかる全体像

NB-IoT(Narrowband Internet of Things)は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)向けに設計されたLPWA(Low Power Wide Area、低消費電力広域ネットワーク)の一種で、低コスト・低消費電力・広範囲カバーを実現する新しい通信規格です。
5GやLTEの通信網を活用し、従来のセルラー回線では難しかった「数年単位バッテリーだけでデバイスを駆動させる省電力」「コスト重視の小型センサ利用」といったIoT社会のニーズを満たす通信規格として開発されました。
NB-IoTが生まれた背景と歴史
IoT機器の普及に伴い、「小型の機器が遠隔地から簡単・安価・省電力でつながる」需要が急増しました。従来の3G/4G/LTEは高速・大容量には強い一方で以下の課題がありました。
- センサーのような「小データ・低頻度」用途にはコストや消費電力が大きな課題
- 地下や屋内・地方などの特定範囲で通信できない場面も多い
こうした課題を解決するために欧州の標準化団体3GPP主導で2016年頃標準化、4G/LTE網を活用したNB-IoTが登場しました。現在は中国や欧州など世界各国で広く導入が進んでいます。
欧州の標準化団体3GPP公式発表はこちら→NB-IOTの標準化が完了
どんな問題を解決する通信規格なのか?
NB-IoTが主に解決を目指しているのは以下の3点です。
- バッテリー寿命が数年続く超省電力通信
- 広域・障害物環境でもつながる(基地局1局で数キロ〜数万台接続)
- 通信コスト削減(SIMやモジュールのコストが通常携帯より格安)
これらを実現することで水道や電気の遠隔検針、環境センサ、農業・畜産・ヘルスケアなどで「配線・電源不要のIoTデバイス活用」が現実的になったのです。
NB-IoTの仕組みと他LPWAとの違い
NB-IoTを正しく理解するには、他のLPWA規格との違いや、既存の携帯電話網との関係性を知ることが重要です。
LoRaWAN・Sigfoxとの主要な違い
LoRaWAN
- 免許不要の周波数(Sub-GHz帯、国内では920MHz帯)を利用
- 自営網(LoRa基地局の設置が必要)、エリア・台数は自社で制御可能
- 中~長距離、省電力だが通信速度・同時通信数・セキュリティは限定的
Sigfox
- 独自ネットワーク事業者による一括運用
- 超省電力・超狭帯域(反面データ量・双方向性に制限あり)
NB-IoT
- 既存の携帯キャリア(NTTドコモ、KDDI等)4G/LTE網を活用(現在はソフトバンクのみがNB-IOTサービスを提供しています。)
- 自社で基地局設置不要、安定通信・大規模展開が得意
- モバイル通信の厳格な認証・セキュリティも利用可
- 地方・山間部・地下にも強いカバレッジ
LoRaWANやSigfoxは自営網・特定用途向き、NB-IoTはキャリア主導の大規模普及/SIM運用が求められる用途に強みがあります。
5G/4G/LTEとの使い分けポイント
- 5G/4G/LTE
- 高速・大容量・リアルタイム性が求められる動画や自動運転、モバイル通信向け
- 相対的に消費電力・通信コストが大きい
- NB-IoT
- 「小容量・定期的なパケット送信」用途(遠隔監視、検針、センサーなど)
- 通信速度は数kbps〜200kbps程度で十分
- 圧倒的な消費電力の低さが最大の特徴
- 設置後に『数年放置可能』な省メンテナンス用途向け
用途特性で明確に差別化されている点がNB-IoTの強みになります。
NB-IoTの主なメリットと用途例

低消費電力・広域カバレッジとは?
NB-IoTの最大の強みをあげるとすれば「超省電力」「超広範囲カバレッジ」の2つになります。。
- 低消費電力
組み込みセンサーやIoT端末を『1回のボタン電池や単三電池で3~10年』稼働させる設計が可能。定期送信時以外はスリープ状態になり、僅かな電力だけ消費します。 - 広域カバレッジ
都市部はもちろん、地下のメーター・奥まったビル・農村や地方でも、キャリア網のもとで安定通信可能。都市部1基地局で数万台のセンサ端末をカバーする事例もあります。
スマートメーター・インフラ監視・農業など代表的なユースケース
以下は実際にNB-IoTを活用した事例になります。
- 水道・電気のスマートメーター(自動検針)
- ガス・電気の消費量遠隔監視
- 地下ピットや鉄道・橋梁など社会インフラの状態監視
- 農業・畜産現場の温度/湿度や位置トラッキング
- ゴミ箱や街路灯などの遠隔監視・メンテナンス
- ヘルスケア(医療機器の位置・稼働管理)
- 防犯・見守り用途
海外では中国製の数千万台規模のメーターインフラ、欧州のインフラ監視、大手エネルギー企業での導入が進行中です。日本でもスマートシティ・自治体インフラの基盤として広がっています。
NB-IoTとCat M1など他規格の比較
NB-IoTと混同されやすい「LTE Cat M1(eMTC)」など他セルラー系LPWAとの違いを整理します。
- 通信速度
- NB-IoT:最大200kbps(送信は更に遅い)、主に単方向・周期送信用途
- Cat M1:最大1Mbps(VoLTE・即時通信も可)、移動体通信や音声用途にも対応
- 遅延
- NB-IoT:数秒から十数秒の遅延あり(周期バッチ型通信向き)
- Cat M1:4G LTEに近い即時性
- コスト
- 両者とも通常LTEより安価だが、NB-IoTはさらに低コスト設計可(端末・SIM)
まとめ:
-「センサーネットワーク」「電池10年の遠隔監視」=NB-IoT
-「移動体・即時制中心・音声あり」=Cat M1
と考えるとイメージが湧きやすいかと思います。
【Q&A】よくある疑問と初心者向けアドバイス
Q1. NB-IoTの通信料金や機器コストはどれくらい?
A. 国内キャリアのNB-IoT SIMは数十円/月~(大手キャリアやIoT専用の格安SIMベンダーも多い)、端末・モジュールも1,500~4,000円台など従来LTEより安価です。数年以上使うなら圧倒的コスパの機器が選べます。
Q2. 通信エリアや通信できない場所は?
A. 現在はソフトバンクの全国4G LTE/キャリアサービス提供エリアで利用可。一方で地下奥や山間部の一部では利用不可エリアもあるので設置前にエリアマップ・現地検証が重要です。
Q3. 開発・運用は難しい?
A. ArduinoやRaspberry Piなど各種マイコン向けのNB-IoTモジュールが入手しやすくなっており、初心者向けガイドも各社から公開されています。商用運用の場合はキャリアとの契約や技適取得などの確認も忘れずに。
Q4. 導入時に特に注意することは?
- 必要なデータ量(バッテリー寿命設計)
- 設置場所の電波状況
- 導入後の管理体制(リモートアップデート、機器交換時の工数)
これらを事前に計画することで失敗リスクを低減できます。
これらの点はしっかりと調査した上で開発することが重要となります。
まとめ|NB-IoTは「コスパ重視のIoT遠隔管理」に最適な選択肢
NB-IoTは、IoT社会が求める「センサーの電池長寿命化」「大量の遠隔監視」「コスト削減」をバランスよく実現した最新の通信規格です。特に「消費電力」「価格」「導入・運用のシンプルさ」が重視される分野で驚異的な実用性を発揮しています。
今後ますます拡大が予想されるスマートメーター、社会インフラ、農業IoT、さらには一般家庭の見守りまで多様な現場で急速に普及していくことが予想されるNB-IoT。用途や規格の違い、導入時のポイントを正しく理解し、最適なIoT環境構築に役立ててください。