デマンドコントローラーとは?仕組みと用途を図解でやさしく解説

「大崎電気製」デマンドコントローラー

電気の基本料金に大きな影響を与える「デマンド(最大需要電力)」は、企業や施設の経費削減・省エネ活動に直結する重要な要素です。その「デマンド」を自動で監視・制御し、無駄な電力消費や電気料金の急増を防ぐのがデマンドコントローラーです。

この記事は、電力需給の基礎から仕組み、活用事例、導入メリット、初心者向けQ&Aまで、図解を交えてやさしく解説します。初めての方でも「デマンドコントローラーがなぜ必要か?」がすぐわかる内容になっています。


そもそも何を制御する機器?

「三菱電機製」デマンドコントローラー

このセクションでは、デマンドコントローラーが「何を」「どうやって」制御する装置なのか、電力管理の現場目線でやさしく紹介します。

電力の「デマンド」とは?

電力デマンドのグラフ

デマンド(demand)とは、契約期間中に記録された最大の消費電力(ピーク値)を指します。工場や商業施設、病院などでは、この最大値が翌月以降の基本料金に直接影響するのです!

具体的には高圧受電500kW未満の建物の場合、その月と過去11ヵ月の最大需要電力(デマンド値)の中で最も大きい値が基本料金の計算に使用されます。

また、高圧受電500kW以上の建物の場合には、過去1年間の最大需要電力(デマンド値)に基づき、電力会社との協議の上、契約電力が決定されます。


つまり、一瞬でも大量の電力を使うと、その分、電気料金が高止まりすることになります。

デマンドコントローラーの役割

建物の電気代に最大需要電力が大きく関係していることが理解できたところで、デマンドコントローラーがどのように省エネや電気料金削減に貢献するのか見ていきましょう。

デマンドコントローラーの役割は大きく以下の3つになります。

  • 現在の電力量や予測値を計測(≒ピークを監視)
  • 契約容量・アラーム設定値を超えそうになると警告や自動節電制御を実行
  • 空調設備や照明設備の間引き運転などを自動指示
    …という「賢い電力の見張り役」です。

仕組みと動作の流れ【パルス信号の役割も図で解説】

ここでは、デマンドコントローラーの働きや“なぜパルス信号(電力量パルス)が重要なのか”を、フローチャートや図をイメージしながらわかりやすく解説します。

仕組みのやさしい流れ図解

デマンドコントローラーを使用したシステム構成図
  1. 電力量計(メーター)から「パルス信号」(=消費電力量を示す信号)が送られる
  2. デマンドコントローラーがパルスを受信し、「今どれくらい電力を使ってるか」をリアルタイム監視
  3. 設定した最大デマンド(基準値)に近づくとアラームやランプ点灯、警告音などで現場に通知
  4. さらに超過が見込まれる場合、自動で「空調設備」「照明設備」などの機器ON・OFF信号を発信
  5. ピーク抑制に成功→基本料金アップを防ぐ

パルス信号の意味・役割

  • パルス信号とは、「消費した電力量に応じて発生する電気的なカウント信号」です
  • これをデマンドコントローラーが受け取ることで、最新の電力使用状況や将来のピーク予測が正確にわかります
  • 予想外の過負荷や異常消費の監視にも役立ちます

どんな設備・施設で使われている?(空調/EV/工場等)

東京のオフィスビル

ここでは、デマンドコントローラーの代表的な設置事例と、その背景を具体的に紹介します。

よく利用される施設・業種

  • 工場・製造ライン
     → 大型機械の同時稼働でピーク値が変動しやすい
  • オフィスビル・商業施設
     → 空調・照明の一斉使用タイミングで契約デマンド超過リスク
  • 病院・学校・体育館
     → 季節変動(夏冬の空調ピーク)、非常用設備の同時稼働でデマンド制御必須に
  • 電気自動車(EV)充電設備
     → 充電ステーション設置時の「同時充電=超過リスク」対策
  • 冷凍・冷蔵倉庫
     → 急な冷凍機起動が契約デマンド値をつり上げやすい

導入で得られる主なメリット

ここではデマンドコントローラーを導入することで得られる代表的なメリットや、企業が期待できる結果をポイントごとに解説します。

期待できる主なメリット

  • 電気基本料金の大幅削減
     年単位で10〜数十万円単位の固定費削減も
  • ピーク時の設備停止リスク低減
     過負荷時の自動制御により突然のブレーカー落ちを防止
  • 電力消費の「見える化」
     グラフ・警告表示で省エネ施策の効果が分かりやすい
  • 省エネ法・BCP(事業継続計画)対策
     法令順守・災害時のリスク管理にもつながる

よくあるQ&A(初級編/用語の解説)

このセクションでは、デマンドコントローラーに関心のある方や導入検討中の担当者から“よくある質問”や専門用語の解説をやさしくまとめます。

Q1. デマンドコントローラーとBEMSは違うの?

A. BEMS(ビルエネルギー管理システム)はビル全体のエネルギー状態を総合管理する仕組みで、その一機能としてデマンド監視や節電制御が付いています。
一方デマンドコントローラーは「最大電力のピーク抑制」に特化した装置です。

Q2. 導入するだけで基本料金は必ず下がるの?

A. コントローラーで自動制御や警告を出しても、現場の設備運用(対応)も大切。設定値や制御方針のチューニング次第で費用対効果が大きく異なります。

Q3. パルス信号が取れないメーターでも使える?

A. 近年の電力量計(スマートメーター)はパルス出力が標準装備。古い積算メーターの場合は、パルス増設や変換器で対応可能です。

Q4. 導入コスト・価格帯はどれくらい?

A. システム規模にもよりますが、小規模オフィスは20万円台〜、中〜大規模工場/施設は100万円〜数百万円が一般的です。

まとめ

デマンドコントローラーとは、「電気のピーク(デマンド値)」を見張り、自動で制御して電気料金の無駄な上昇を防ぐ省エネ・節約装置です。

パルス信号などの通信・データ技術により、空調やEV充電、工場設備など身近なあらゆる現場のコスト削減やBCP対策に威力を発揮します。


基礎用語や仕組み・導入例をしっかり押さえ、最適な機器選定で“かしこい電力経営”を実現しましょう。

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