エアコンの圧縮機とは?仕組み・役割・構造をわかりやすく解説

冷凍・空調(エアコン)の圧縮機

快適な空間を保つために欠かせないエアコン。その「心臓部」ともいえるのが「圧縮機(コンプレッサー)」です。しかし、普段は目に見えないため、「どの働きをしているの?」「仕組みが難しい…」と感じる方も多いでしょう。

この記事では、圧縮機の役割や基本構造はもちろん、主要メーカーごとの特徴、馬力・定格出力の意味、設置場所や故障時対応まで、図解を交えて“はじめてでもわかる”よう丁寧に解説します。

圧縮機の構造・原理(図解つき)

最初に、圧縮機の構造や動作原理を見てみましょう。このセクションでは図や専門用語も交え、仕組み・役割をイメージできるよう説明します。

圧縮機の基本原理

圧縮機は、「冷媒ガス」を高圧・高温の状態に変え、冷暖房のサイクルを成立させます。
エアコンは室内外の熱を「冷媒(=熱を運ぶガス)」に乗せて移動させていますが、冷媒は気体→液体→気体…と状態変化(サイクル)します。その流れの中で圧縮機が“要所”となります。

断熱圧縮のイメージ図

冷凍・空調における冷凍サイクル
低圧冷媒(気体)→[圧縮機]→高圧・高温冷媒(気体)→熱交換器→冷媒(液体)→膨張弁→低圧冷媒(液体)…

この仕組みを利用し、

  • 冷房時:「室内から熱を回収→圧縮→室外に放出」
  • 暖房時:「室外から熱を取り込み→圧縮→室内へ放出」
    といった熱の運搬役を果たしています。

圧縮機の働き(冷房)

  1. 室内機で熱(エネルギー)を“受けた”冷媒ガス(低温低圧の気体)が室外機へ移動
  2. 圧縮機でギュッと絞られ(圧縮)、一気に高温・高圧ガスとなる
  3. 高温になった冷媒ガスは、室外機熱交換器で熱を空気中に放出(冷房時)
  4. 冷媒は液体化し、膨張弁を通ることで再び低温に
  5. このヒートポンプサイクルが連続的に循環する

この動きは「エアコンの冷房・暖房どちらでも同じ」です。圧縮機がなければ、効率よく熱移動できず、冷暖房は成り立ちません。

用語ワンポイント

  • 冷媒:エアコンの熱交換を担うガス(現行はR32など)
  • ヒートポンプ:熱を移動させるサイクル全体(圧縮機は主部品)

圧縮機の主な種類とエアコンでの違い

この章では、エアコンに採用される代表的な圧縮機の種類と仕組みの違いを図や事例で解説します。

主な圧縮機の種類(家庭用・業務用)

  1. ロータリー式
     - 小型・中型家庭用やパッケージエアコンに多い
     - 構造:シリンダ内のローターが回転し、冷媒を圧縮
     - 特徴:部品が少なく故障しにくい、静音性・省エネ性◎
  2. スクロール式
     - 業務用~大型ルームエアコンに多い
     - 構造:固定した渦巻き板と回転板が冷媒を包み込み圧縮
     - 特徴:高効率・高出力・より静か
  3. ピストン式(レシプロ)
     - 一部業務用、大型旧式機器
     - 構造:車のエンジンのようにピストンが往復し圧縮
     - 特徴:耐久力大だが旧型が多く、騒音や振動も
  4. ツインロータリー/スクロール・インバータ式
     - 最新エアコンで主流
     - 構造:2つのローター・渦巻きで滑らかに冷媒圧縮
     - 特徴:省エネ・静音・微細制御可能
     

家庭用エアコンでよく見られるのは?

  • 現在はスクロール式 or ツインロータリー式が主流です。
  • 格安モデルや旧式はロータリー式が多く、業務用・高性能モデルはスクロール式やピストン式が使われます。

主要メーカー別の特徴(ダイキン・日立・三菱など)

ここでは、圧縮機の作り分けや省エネ工夫が顕著な大手エアコンメーカー別の特徴を簡潔にまとめます。

ダイキン

  • スクロール圧縮機・インバータ技術が強み
  • 独自の“二重スクロール”やマグネットモーターで高効率、省エネ
  • 圧縮機の静音設計や耐久性も業界トップクラス

日立

  • コンパクト設計+インバータ制御
  • 最新モデルはツインロータリー+静音強化
  • 熱交換サイクルの最適化で消費電力ダウン

三菱電機

  • 独自ロータリー&スクロール圧縮機を採用
  • 丈夫さ・コストパフォーマンス・省エネ性能のバランス重視
  • インバータ制御で制御自在、動作安定

パナソニック、東芝など

  • 省エネ・快適性を軸にツインロータリー化やAI連携を推進中
  • 冷媒流量や効率化制御の微細化が進む

各社で省エネ・静音技術にしのぎを削っており、故障時修理費や交換時の部品価格・対応性も実はメーカーによって差が出ます。

能力・馬力・定格出力の基礎知識

圧縮機を搭載したエアコンの室外機

圧縮機の性能を知るうえで理解必須なのが「能力」「馬力」「定格出力」。このセクションでわかりやすく説明します。

主な用語の意味

  • 能力(定格能力)
     → エアコンが1時間あたりに運べる熱量(kWやkcal/h)
  • 馬力(HP;HorsePower)
     → エアコン出力の“目安”で1馬力=約2.8kW。業務用機でよく使われる
  • 定格出力
     → 圧縮機自体が消費する電力の最大値。そのエアコンが全力運転した時の“消費パワー”を指す

圧縮機の性能比較イメージ

  • 一般家庭用
      標準:1.8kW~5.6kW(6畳~18畳程度用)
  • 業務用
      2馬力(5.6kWクラス)~8馬力(22.4kWクラス)など。大型設備はさらに高出力

失敗しない選び方のコツ

  • 部屋や店舗・工場の広さ、断熱性、用途に合った「能力/馬力」を選ぶ
  • メーカーや設置業者の仕様比較表で【能力(kW)】と【消費電力(kW)】両方を確認
  • 年式・冷媒タイプによっても省エネ効率が変わるので最新機や補助金活用も

関連用語と「どこにある?」などよくある疑問

この章では、初心者が疑問に思いやすい“圧縮機の設置場所”なども含めて、知っておくと便利な用語とQ&Aをまとめます。

よくある関連用語

  • コンプレッサー…圧縮機の英語名。業者やマニュアルでよく使われる
  • 冷媒(れいばい)…熱を運ぶガス。現行多くはR32、旧型はR410Aなど
  • 膨張弁…冷媒の液体化と減圧を担当する部品。圧縮機と並ぶ重要部品
  • 室外機…圧縮機が内蔵されている箱(外壁やベランダに設置されている部分)

圧縮機はどこにある?

室外機の中、本体下側や奥まった部分に密封状態で設置されています。外から部品自体は見えませんが、運転音のわずかな「ブーン」という音や振動で存在を感じることがあります。

こんな時どうする?Q&A

  • 「圧縮機が止まるとどうなる?」
     → エアコンは送風しかできなくなり、冷暖房は停止します(故障のしるしです)。
  • 「圧縮機の修理は自分でできる?」
     → 圧縮機は高圧ガス・電気部品なので、専門業者に依頼必須です。

まとめ

圧縮機はエアコンの“心臓”であり、冷媒を高温・高圧にすることで部屋の熱の出し入れ=冷暖房を支えています。その役割や構造を理解すれば、機種選びや故障時の判断にも役立ちます。


主要メーカーごとの特徴や、馬力・能力・定格出力といった専門用語も押さえつつ、不安なときは「メーカー・専門業者に相談」が鉄則です。

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