この記事では、工場やビル設備担当者、初学者の方に向けて「熱量演算器」についてやさしく解説します。まず結論として3つのポイントをお伝えします。
- 熱量演算器とは、流体(主に水や蒸気)の熱エネルギーを計算する計測用装置です。
- 配管内の流れる流体の「温度差」と「流量」から、瞬時および積算の熱量(kJやkWh)を算出します。
目次
熱量演算器の仕組みと使われる理由
この章では、熱量演算器の基本的な動作方式と設置される主な理由・目的について解説します。
1. 熱量演算器の基本構造
熱量演算器は「流量計」と「温度センサー」からの信号を受け取り、内蔵の演算回路(またはマイコン)が“熱量の公式”にもとづいて演算を行います。
基本の公式(例:水の場合)
Q = ρ × C × F × (T1 - T2)
- Q:熱量 [kW]
- ρ(ロー):流体密度 [kg/m³]
- C:比熱 [kJ/kg・K]
- F:流量 [m³/h]
- (T1-T2):入口と出口の温度差 [℃]
熱量演算について詳しく知りたい方はこちら→熱量計算をマスターしよう!流量・温度差を用いた熱量計算を水を例に解説
2. なぜ「熱量演算器」が必要?
先ほど、熱量演算における“熱量の公式”について解説しました。建物において熱量は消費エネルギーを把握したり、自動制御に有効活用できる重要な情報です。この熱量を有効活用する上で欠かせない熱量演算器の役割を以下に紹介いたします。
- 熱量演算器により、熱エネルギー管理(ボイラー効率、省エネ診断)や空調・給湯システムの消費エネルギーをリアルタイムで可視化できる
- 複雑な熱量計算を自動で行い、デジタル信号として出力(アナログ/パルス/通信)も可能
- チラー発停など熱源設備の台数制御として熱量情報を演算し出力する
導入が進む背景
- 省エネ法の強化やZEB(ゼロエネルギー化)対応で需要増加
- IoT時代、BEMS(ビルエネルギーマネジメント)等のデータ収集にも必須
計測の原理(流量・温度差の演算と信号の流れ)

前の章では熱量を演算するための公式について触れました。この章では、熱量演算器が実際にどうやって“熱量値”を計算しているのか、その原理と信号の流れをやさしく解説します。
1. センサーからのデータ取得
- 「入口温度」「出口温度」「流量」を各センサーでリアルタイムに測定
- 信号伝送は4-20mAアナログ、抵抗値など様々
2. 熱量演算プロセス
- センサー値をマイコンやCPU基板で演算
- 水・蒸気などの特性値(比熱・密度)は設定済み or 自動補正
- 結果として「瞬時熱量(kW)」と「積算熱量(kWh)」を常時計算
3. 記録・警報・通信
- 演算した熱量値は、制御盤表示・BEMS送信・警報リレー出力など現場用途に応じて多様に利用できる
- シーケンサ(PLC)、集中監視システムからのデータ収集にも最適
アズビルと長野計器の熱量演算器メーカーを比較

この章では、国内主要2メーカーである「アズビル」と「長野計器」の熱量演算器の特徴、選ばれる理由を比較します。
【比較視点】
- 製品ラインナップ・アプリケーションの広さ
- 専門対応力(校正・現場サービス)
- 業種導入実績
アズビルの主な熱量演算器(特徴・型式・適合業界)
1. 主な特徴
- 「現場制御盤向け」「BEMS連携向け」にモデル多数
- 複数ライン・冷温水/蒸気/その他流体にカスタム対応
- 長年の実績+オーダーメイド仕様・トラブル対応可
2. 人気型式の例
- Azbil WTYシリーズ:高精度演算・豊富な機能が特徴
- サポート体制が充実し、大手ビル・工場でも標準採用
3. 適合業界
- ビル空調(HVAC)、エネルギー管理、プラント、公共施設
長野計器の主な熱量演算器(特徴・型式・公式PDF案内)

1. 主な特徴
- 「盤内組込・工場用途(高信頼)」に強み
- 国内法定検針にも適合した積算熱量計・演算器
- 流量・温度計測部品も幅広く供給
2. 型式例・公式案内
- CY83シリーズ:冷温水用演算器、納入実績多数
製品資料:積算熱量計 CY83| 長野計器製品情報
3. 適合業界
- 工場設備全般、エネルギー管理、省エネ法対応事業所
導入現場事例・用途一覧(工場/HVAC/省エネ計測)
どのような現場で熱量演算器や積算熱量計が使用されているか、典型的な事例・メリットを紹介します。
【用途一覧と効果】
- 工場ボイラー/蒸気配管…熱損失・効率の監視、トータルエネルギー管理
- ビル空調(冷暖房コイル)…ゾーン別の熱量配分、省エネ管理、制御機器の発停
- 給湯システム…消費エネルギーの見える化と省エネ診断
- 地域熱供給プラント…顧客ごとの熱量課金/精算システム
- エネルギーレポート・法定管理…省エネ法に基づく提出用データ取得
【導入効果まとめ】
- エネルギー使用量の把握・“見える化”によるコスト削減
- 客観データでの設備更新・最適運転判断
- BEMS・IoT監視との親和性(リアルタイム通信・遠隔確認OK)
- 最適な容量制御(設備機器の発停)による、省エネルギー化
まとめ
熱量演算器は“熱量計算の頭脳”として、現代の省エネ・効率化現場では必須の機器です。積算熱量計や単体熱量計との違いを理解して、導入現場や用途、希望する計測方式に合わせた最適な製品を選びましょう。











