BACnetは「Building Automation and Control Networks」の略で、オフィスビルなどの建物設備を自動化することを目的とした通信プロトコルです。
具体的には様々な建物の空調(HVAC)、照明、セキュリティ管理、防災システムなど、異なる機器間の相互通信を可能にする役割を担っています。
現在では建物の運用管理システムにおける標準的な通信プロトコルとして日本でも普及してきています。
この記事では、BACnetの基礎からその通信仕様と規格、さらに業界における他の規格との比較についてわかりやすく解説していきます。
BACnetとは?基本から規格と通信仕様の全貌を解説

BACnetの基礎知識と規格について
まずはBACnetの基本知識としてBACnetの主な特徴と規格について解説していきます。
先ほどBACnetは空調、照明、セキュリティ管理、防災システムなどの様々な機器間の相互通信を可能にすると説明しました。
実は一昔前までの建物管理では、空調やセキュリティなど、分野ごとにメーカーが特有の通信方式を開発し、運用してきました。
ところがメーカーごとに通信仕様が異なるため、空調、照明、セキュリティなどの機器に対し、独立したシステムや制御が必要でした。(この場合コスト増や管理が大変になるデメリットがあります。)
そんななか、BACnetは業界の標準となる通信仕様を定めたオープンプロトコルとして開発され、BACnetに対応した機器であれば相互通信が可能になりました。
これによりメーカーが異なっていても、BACnet対応の機器であれば空調や照明、セキュリティ機器が相互通信し、なおかつ統合してシステム管理できるようになりました。
このオープンプロトコルにより、マルチベンダーで建物設備の自動化や統合管理が可能な点がBACnetの大きな特徴になります。
BACnetの規格について
BACnetは1995年にANSI/ASHRAE(アメリカ国家規格協会/アメリカ暖房冷凍空調学会)によって規格が定義され、以来、多くの国際的な規格に取り入れられています。
日本国内では電気設備学会(IEIEJ)がBACnetを日本仕様にした標準規格を策定し、日本のメーカーはこの規格ガイドラインに沿って国内向け製品を開発しています。
この標準規格はBACnetの利便性を向上させる目的で機能追加や変更がある度にバージョンアップされます。
BACnetの規格バージョンの主な変遷については以下の通りです。
規格 | 公表 |
---|---|
IEIEJ-P-0003:2000 アデンダムa | 2002年 |
IEIEJ-G-0006:2006 アデンダムa | 2008年 |
IEIEJ-P-0003:2000 アデンダムb | 2009年 |
IEIEJ-G-0006:2017 | 2021年 |
BACnetの標準規格の変更内容などについては、BAS標準インタフェース仕様書、BACnetシステムインターオペラビリテイガイドラインに対する追加を参照ください。
これだけは覚えたい!BACnetの主な通信仕様と種類

ここからはBACnetの通信仕様についてわかりやすく解説していきます。
まず、BACnetにはサービスと呼ばれる様々な機能があり、このサービス機能を利用してデータのやり取りや通信を行います。
例えばWho-Is・I-Amなどのデバイスの死活監視やRead-PropertyやWrite-Propertyなどのデータの読み込みや書き込みなどです。
これらのプロトコルサービスを使用して、オブジェクト(データ)の通信を行います。
次にBACnetのデータリンク層についてですが、国内ではBACnet/IPとBACnet MS/TPという2つの通信方式があります。
通信方式 | 特徴 |
---|---|
BACnet/IP | BACnet/IPはUDP/IPのことでイーサネット上でBACnet通信を行います。物理層はLANケーブルなどを用いて通信を行います。(オーバーヘッドを小さくするため、TCPではなくUDPを選択しています。) |
BACnet /MSTP(Master-Slave/Token-Passing) | BACnet MS/TPはEIA-485(RS-485)を使用してデータを伝送します。 |
これらの通信仕様により、ビルオートメーションシステムの拡張性と柔軟性を高め、デバイスの効率的な統合と制御を可能にしています。
まとめ【BACnetのメリット】
今回はBACnetの規格から通信方式まで、基本知識を解説してきました。
最後にまとめとしてBACnetの特徴とメリットについて整理しておきましょう。
BACnetの特徴とメリット
特徴 | メリット |
---|---|
相互運用性 | 異なるメーカーの機器を統合可能(オープンプロトコル) |
拡張性 | 環境やニーズに応じた柔軟なシステム拡張が可能 |
コスト効率 | 設備を統合することで管理・運用コストを削減 |
標準化 | ISOも含めた国際標準規格として広く認知 |
BACnetは、ビルディングオートメーションに必要なデバイスの相互通信と柔軟性を提供する重要な通信プロトコルです。
オープンシステムとして、異なるメーカーのデバイスを統合し、管理しやすい環境を提供することにより、総合的なビル管理の効率を大きく向上させます。
これにより、運用コストを削減し、長期的な価値を創造することができる素晴らしいプロトコルとして今後も活用が期待されます。