設備やビルオートメーションの国際標準通信プロトコルであるBACnet。BACnet通信の中核機能を担う“オブジェクト”管理を正しく理解することは、開発や運用のすべての現場で不可欠です。
この記事ではBACnetのオブジェクトタイプ番号の一覧を見やすい表で整理し、CSV活用事例や中央監視での具体的用途、技術者向けQ&Aや関連リンクまで網羅します。データ管理・制御効率を高めたいすべての担当エンジニア必見の実践記事です。
BACnetオブジェクトの役割と仕組み

このセクションでは、そもそも「BACnetオブジェクト」とは何か、タイプ番号管理の意味や業務への重要性について解説します。
BACnetにおける“オブジェクト”とは、空調や照明制御、センサなどさまざまな現場設備を論理的に表現し管理する単位です。
例えば「アナログ入力(温度センサー値)」「アナログ出力(ダンパー開度)」「バイナリ出力(ON/OFF制御)」など、多岐にわたる機能ごとに“オブジェクトタイプ”が割り当てられています。
各オブジェクトには「タイプ番号」と「名称」があり、これにより異なるメーカー機器間でも共通のデータ構造・意味を持つデータ連携が可能です。また、BACnet対応システムではこれらの設定や監視、アドレス管理もオブジェクト単位で行います。
オブジェクトタイプ番号一覧(テーブル化/番号-名称-用途)
ここでは、BACnet標準の代表的なオブジェクトタイプ番号と名称、実務での主な用途を見やすい表でまとめます。ファイル出力や社内シート運用にも役立ててください。
タイプ番号 (オブジェクトタイプ) | オブジェクト名称(英語) | 用途・例 |
---|---|---|
0 | Analog Input | 各種アナログ入力値(温度、湿度等) |
1 | Analog Output | アナログ制御出力(ダンパー等) |
2 | Analog Value | 内部アナログ値計算用 |
3 | Binary Input | パルス・接点監視(扉開閉等) |
4 | Binary Output | 機器ON/OFF等バイナリ出力 |
5 | Binary Value | 内部2値フラグ |
8 | Device | 制御機器(デバイス本体) |
9 | Event Enrollment | イベント管理 |
13 | Multi-state Input | 複数選択肢入力(運転3段切替等) |
14 | Multi-state Output | 複数選択肢出力(モード変更等) |
17 | Schedule | スケジューリング制御 |
20 | Trend Log Multiple | 複数データ一括ロギング |
23 | Accumulator | 電力量など積算点の管理に必要 |
… | … | … |
公式には60種類を超えるオブジェクトが標準化・番号付けされています(最新版はASHRAE 135規格やメーカー実装情報を参照)。
CSVフォーマットでのデータ管理・活用法
実際の運用や設計現場、データ移行・システム連携では「BACnetオブジェクト一覧のCSV管理」が作業効率を大きく左右します。
例えば異なるメーカのシステムを統合するとき、各システム内のオブジェクト情報をCSVで管理し、そのCSVデータを活用することで効率的にシステムを構築することが可能になります。
本章では、CSV運用の基本フォーマットや管理コツを解説します。
CSVサンプル(ヘッダーと1レコード例)
Object_Number,Object_Name,Object_Type,Object_Instance,Description,Unit
0,RoomTemp_Sensor,Analog Input,1,"会議室Aの温度",℃
1,AHU1_Damper,Analog Output,2,"AHU1用ダンパー制御",%
3,MainDoor_Sw,Binary Input,5,"南エントランス接点",""
...
- Object_Number: オブジェクトタイプ番号
- Object_Name: 任意の管理名
- Object_Type: 英語名称(”Analog Input”等)
- Object_Instance: インスタンス番号
- Description: 用途メモ
- Unit: 単位
※実際のCSVファイルはメーカーシステム毎に必要なオブジェクトやプロパティが異なるため、システムを構築する際は念入りに打ち合わせする必要があります。
BACnetのCSVフォーマット例:【Azbil社】フォーマット定義
CSV管理のポイント
- システム増設・変更時のエクセル入出力や一括編集に便利
- 主要プロパティを列管理し、説明欄を十分に活かす
- 新規オブジェクトは既存一覧から“重複なき管理”が鉄則
- ソフト連携時はメーカー指定のCSV仕様(並び順・必須項目)も要確認
中央監視システムなど用途別活用例
BACnetオブジェクト番号一覧やCSV管理がどのような現場用途で役立つのか――実際の中央監視システムや現場管理への活用例を紹介します。
1. ビル中央監視(BAS/BEMS)
ゾーンごとの温湿度データ(Analog Input)、空調バルブやダンパー(Analog Output)、入退室・警報(Binary Input/Output)、アラーム(Notification Class)を整理・監視。CSVによる一括インポートで設定の抜け漏れや重複も抑制。
2. 機器間連携・製品改修
複数メーカー間のBACnet対応機器でも、オブジェクトタイプ番号が共通であれば、データの意味付け作業やリンク、トラブル時の切り分け業務が簡単に。
3. システム統合・更新
旧システムのCSV一覧を流用し、新BAS(Building Automation System)へのオブジェクト自動割付や属性引き継ぎを実現。
技術者向けQ&A、用語集
オブジェクト番号や関連管理で技術担当が直面しやすい疑問や用語をQ&A形式と用語解説付きで整理します。
Q&A例
Q:同じオブジェクト番号・インスタンスを複数登録するとどうなる?
A:競合やシステムエラーの原因に。必ずユニークな割付が必要です。
Q:独自機能(メーカー拡張)にも番号が付く?
A:基本は標準タイプ使用。独自拡張用途にも“カスタム番号”を割り当てる場合があるが、相互接続時は注意。
Q:CSV一覧が大規模化。管理のコツは?
A:階層/カテゴリ分け、オブジェクトのグルーピング、用途別CSV化等でメンテ負荷を削減できます。
関連用語解説
- インスタンス番号:同一オブジェクト内の一意識別子
- バイナリ/アナログ:2値/連続値(例:ON-OFF/温度等)
- Notification Class:アラーム/警報発報の管理単位
まとめ
BACnetオブジェクトタイプ番号の管理は、BAS/BEMSや監視システムの省力・信頼運用の基礎です。この記事の一覧表・CSVサンプルを活用し、今後のシステム設計・点検・拡張運用で「抜け・重複なきデータ管理」を実現していきましょう。更なる実践ノウハウや製品情報も内部リンクからご覧ください。