空調機関連の仕事や業務に携わる方であれば湿り運転や過熱運転という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
家庭用エアコンや業務用空調などの運用において、湿り運転と過熱運転はとても重要な概念です。
この2つの運転状態は空調機の効率と安全性に大きな影響を及ぼします。
この記事では空調機関連の仕事や業務に携わる方に対して、湿り運転と過熱運転について詳しく解説し、それぞれの運転状態を理解することで空調関連の業務に役立てることを目的にしています。
湿り運転と過熱運転の違いとは?それぞれの原因と対策まで徹底解説

湿り運転と過熱運転の基礎知識と違い
まず初めのステップとして、ここでは空調における湿り運転と過熱運転とはどういった状態なのかを解説していきます。
ここでは基本的に空調機は冷房状態であることを前提に話をしていきます。
湿り運転とは
湿り運転とは簡単に説明すると冷媒(フロンガス)が熱交換器(蒸発器)から出る時点で完全に蒸発していない状態を指します。
この状態では冷媒の一部が液体のまま圧縮機(コンプレッサー)に戻る可能性があり、場合によっては圧縮機の性能低下や故障させる可能性があります。
湿り運転状態では空調運用の大切な指標である過熱度は適正値よりも低く値となります。
過熱度について詳しく知りたい方は「過熱度とは?基礎から計算方法まで詳しく解説!
」を参照ください。
過熱運転とは
過熱運転は熱交換器(蒸発器)を通過後の冷媒(フロンガス)が飽和温度よりも高い温度で圧縮機(コンプレッサー)に戻る状態を指します。
これは冷媒が熱交換器(蒸発器)内で完全に蒸発した後、さらに室内の熱を吸収(加熱)することを意味します。
過熱運転状態では空調運用の大切な指標である過熱度は適正値よりも高い値となります。
湿り運転と過熱運転の原因と不具合

ここまで湿り運転と過熱運転の状態とはどのような状態かを解説してきました。
次に空調運転時に湿り運転と過熱運転となってしまう原因や想定される不具合について解説していきます。
湿り運転が起こる原因と引き起こされる不具合
湿り運転の主な原因は以下の通りです:
- 熱交換器(蒸発器)に入る冷媒量が多い。(冷媒の過充填や膨張弁不具合などが考えられます。)
- サーミスタ(温度センサ)のズレ。(サーミスタの検出温度がズレることにより、膨張弁が本来より開きすぎている)
- エアフィルタや熱交換器の汚れ。(汚れにより、空調機の吸い込み量が低下し、冷媒が蒸発し切らない。)
湿り運転が引き起こす不具合には以下があります:
- 圧縮機(コンプレッサー)への液戻り 。(液冷媒が圧縮機に混入し、圧縮不良や能力低下、最悪の場合故障。)
過熱運転が起こる原因と引き起こされる不具合
過熱運転の主な原因は以下の通りです:
- 熱交換器(蒸発器)に入る冷媒量が少ない。(冷媒のガス漏れや追加充填不足。)
- 熱交換器(蒸発器)の熱負荷の増大。(機種能力選定ミスや窓の開放などの熱負荷が過大となっている。)
- 冷媒系統のつまり。(冷媒配管のつぶれや冷媒フィルタの詰まりなど)
過熱運転が引き起こす不具合には以下があります:
- 圧縮機のオーバーヒート。(冷媒には圧縮機を冷やす役割もあるが、過熱運転時は圧縮機を冷却できなくなり、最悪の場合、圧縮機が故障します。)
まとめ
今回は空調運転時の湿り運転と過熱運転について解説しました。
湿り運転と過熱運転は、空調機の運用効率や機器故障などに直接影響する状態です。
湿り運転と過熱運転の概念と影響を理解することで、空調機の不具合時の原因特定や運用改善にとても役に立ちます。
空調機関連の仕事に携わる方はぜひ湿り運転と過熱運転の知識を役立ててください!